親知らず日誌3

今日は親知らずの話をひとつ・・・。食文化の変化に伴って、現代人の顎が小さくなってきているという話を聞いた事あるでしょうか。顎が小さくなると親知らずが並ぶスペースがなくなって横向きに生えたり、ちゃんと生えずに埋まったままだったり正常でないことが多いのです。では昔の人はどうだったのでしょうか?昔の人は8番目の親知らずの奥に9番目の歯があったと言われています。ということで、どれくらい昔の人に9番目の歯があって、どれくらいのスピードで歯がなくなって言ったかを引用して御報告いたします。

進化(やまぴろ作)

大昔の話です。約6000万年前の暁新世中期の穿下 類(パレクトン・いわゆる原始的なサル)では歯は全部で36本だったそうです。約100~200万年前の猿人(アウ ストラロピテクス・最古の化石人類)になると, 全歯数は32本に減少し、3本の大臼 歯のうちで第3大臼歯(親知らず)がもっとも大きくかっ機能的で あったと言われております。そうです、親知らずの奥に歯があったという話はこんなに前の話なんです。

約80万年前(更新世中期)に出現した原人 (ホモ・エレクタス,原始的人類)は,自然の火を使って食物を焼きはじめた。このときから,人類の第3大臼歯 (親知らず)の退化傾向が始まったといわれ,まず第3大臼歯(親知らず)は第2 大臼歯より縮小したようです。  約10万年前(更新世後期)に登場した新人 (ホモ・サピエンス,クロマニヨン人)になると,約3万 年前から第3大臼歯の欠如(消失)が始まりました。

約1万年前(完新世)に,狩猟や漁猟に代わっ て,栽培(稲作農耕)による食糧の生産がはじまり,食 物の質の変化を生じました。これに斜なって,歯数の異常と して現われる第3大臼歯(親知らず)の先天性欠如(Congenital absence)はすごい勢いで加速されたといいます。

鈴木先生によれば,第3大臼歯の全歯萌出率(親知らずが歯茎からちゃんとはえている人の割合)は、縄文時代 には81.0%,古墳時代に62.7%,鎌倉時代に42.9%,現 代は36.0%と,減少の一途を辿ったと報告しております。A)。  同じく山田先生は,第3大臼歯の欠如率(親知らずがない人の割合)について,縄文時 代人は上顎6%・下顎5%,弥生時代人は各々24%・ 19%、弥生時代~江戸時代は各々20-31%・19-35 %、明治時代~現代は各々19-41%・13-26%と報告した。B)。親知らず抜歯の仕事をしていると、横向いた親知らずばかり紹介していただくので、ものすごく多くの方が横向いた親知らずを持っている印象があるのですが、まっすぐの親知らずを紹介していただけずに、横向いた親知らずばかり紹介していただくからそのように感じるんでしょうかね・・・・

A)鈴木尚:日本人の骨、岩波書店114-115. 1963

B)山田博之:日本人の智歯の欠如率、人類学雑誌515-516. 1993

福岡で親知らずの抜歯を勧められたら是非おいでください。なるべく痛くなく腫れない努力をしますので・・・

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