昨年の12月からブログをさぼっておりましたが、久しぶりに再会したいと思います。
今回は下顎智歯抜歯に必要な下顎骨の解剖についてお話します。
下顎智歯の抜歯で重要な下顎骨の解剖といえば下歯槽神経と下顎智歯や舌神経の位置にフォーカスがあたりがちです。しかし、下顎智歯の位置や方向を考える上では、下顎枝と下顎体の関係がとても重要な気がするのです。今回はあまりフォーカスが当たってないけれども、これからブログを続ける上で重要だと考える解剖について解説します。
下顔面を形作る下顎骨は側頭骨との間に関節を作る馬蹄型の骨です。下顎骨は中央部の下顎体とその両後端でほぼ垂直に立つ下顎枝で形成されます。下顎骨体部の歯槽骨に永久歯が並んで、歯列弓を形成すします。下顎骨体部の長径が短いために智歯が歯列弓上に並ばず歯肉から正常な萌出ができないためにトラブルが多いのです。この下顎智歯の正常萌出に下顎第二大臼歯と下顎枝前縁の位置が大きく影響すると考えています。この下顎枝前縁、特に外斜線の位置を理解することが下顎智歯の埋伏状態を予測する一つの手段だと思います。もう一つ重要な解剖学的構造は、下顎骨の下顎臼歯部より後方では、顎舌骨筋線より下方で陥凹し、下縁に向かって外側に広がっていることです。この形態によって、骨製埋伏智歯の向きや位置が変わってきます。
パノラマX線写真で示される症例は下顎智歯がちゃんと萌出して、歯列に並んでいるPell・Gregory分類のⅠA症例です。これが、下顎智歯が正常に萌出するのに必要条件を満たした下顎骨の形態だと考えられます。
どこまで下顎体で、どこから下顎枝という明確な境界はありませんが、歯列が並んだ下顎体の外側に下顎枝が広がっている様子がわかると思います。真横から見ると、下顎枝前縁外斜線は下顎智歯の歯冠を隠さずに歯頸部あたりから上方に延びているようにみえます。
次の症例のように下顎体の成長が不十分で萌出位置が確保できない時に、下顎智歯の萌出異常が発生すると考えられている。
下顎智歯の歯冠は必ずしも下顎体にあるわけではなく、下顎枝内にあることもあります。歯冠が下顎枝内にある場合と、歯冠が下顎骨体に出てきている場合、下顎体の深い位置にある場合それぞれのアプローチの仕方が違います。今後のブログでは下顎智歯の位置関係やアプローチの仕方についてお話ししたいと思います。
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