Pell及びGregoryの分類

下顎智歯抜歯の難易度を評価する指標として、埋伏智歯の深さと萌出余地という項目があります。これらを評価するために、Pell及びGregoryの分類が最も有名ですね。1933年にPellとGregoryが発表したこの分類は、下顎埋伏智歯の垂直的・水平的位置を下顎骨、第2大臼歯を基準に規定した分類です。垂直的位置(萌出の程度)は3つのpositionにわけて、A.智歯歯冠最高点が第二大臼歯咬合平面の水準にあるか、その水準より高位にあるもの、B.智歯歯冠最高点が第二大臼歯咬合平面より低位にあるが、第二大臼歯歯頸部より高位にあるもの、C.智歯歯冠最高点が第二大臼歯歯頸部より低位にあるものとしました。また、水平的位置(萌出余地の程度)は3つのclassにわけて、1.下顎第二大臼歯遠心面と下顎枝前縁との間の萌出余地が智歯歯冠幅径以上のもの、2.萌出余地が智歯の歯冠幅径より狭いもの、3.智歯全体もしくはその大部分が下顎枝にあるものとしました。

この水平的な位置の分類ですが、垂直方向の下顎智歯に関しては大きな問題はないのですが、近心傾斜歯や水平埋伏智歯に関しては多少の違和感を感じます。

classⅠでは、下顎第二大臼歯遠心面と下顎枝前縁との間の萌出余地(青線)が智歯歯冠幅径(赤線)以上であるが、下顎枝の位置がかなり後方となる。近心傾斜歯や水平埋伏智歯において、この萌出余地が下顎智歯の歯冠幅径を超える症例はどれぐらいあるでしょうか。

 

4334側のレントゲンに対してすべての症例で検討を行ったところ、positionAの中でもclass1 が699側、class2が1955側でclass2が著明に多いです。さらにこれを垂直位と水平埋伏、近心傾斜に分けて分類したところ、全体の症例のclass1のほとんどが垂直位で、水平埋伏と近心傾斜にはほとんど含まれませんでした。

水平埋伏だけでみると、positionAでは、ほとんどがclassⅡで、classⅠは全体の1パーセント未満、classⅢは3%、また、近心傾斜歯でもPositionAでもclassⅠは全体の6%、classⅡは47.4%、classⅢは2.4%と圧倒的にclassⅡが多い。非常にシンプルな評価方法であるが、水平埋伏と近心傾斜の中でもこれだけ偏りがあると、分類の仕方に問題があるように思います。

おそらくこのような理由で、水平埋伏や近心傾斜に関しては下顎枝の位置が歯冠(歯冠高)を超えるかどうかで改変した分類による論文がほとんどなのでしょう。ただ、分類の解説文には、もともとPell-Gregory分類と同じく、歯冠幅径よりも広い萌出余地があるか否かと記載しており、正確な説明がなされていませんので、このこともきになります。

今回はPell-Gregory分類の「下顎智歯歯冠近遠心幅径」を「下顎智歯歯冠」として改Pell-Gregory分類としました。ただし、近心傾斜については遠心咬頭を覆うかどうかで、classⅠとclassⅡを分けて分類を行いました。

こうすれば・・・次のようなデータになります。

ということで、最近のPell-Gregory分類は、改変された分類で行われていることがわかりましたので、その理由も含めてご報告いたしました。あと、古い分類で1Aに水平埋伏智歯が少ない理由としては、やはり、下顎枝の位置が十分に後方に位置すれば、正常方向に萌出する可能性が大きいということではないでしょうか??でも下顎枝の位置が十分に後方にあっても正常方向に萌出しないこともあるということがわかりますよね。

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