今日は大学病院の先生方との医療管理懇談会でした。
九州大学・九州歯科大学・福岡歯科大学の教授がいらっしゃって、治療中におこる合併症について検討会を行いましたのでその内容を簡単に御報告します。
気腫症例の現況(年間症例数・対応処置など)について
症例
九州歯科大学 2016年4月から2017年3月まで 2例
九州大学 昨年1年間 7例
福岡歯科大学 2007年1月から2016年1月まで 11例
原因:智歯抜歯、抜髄、歯肉整形、レーザー使用時、印象採得、気管切開後等
原因や対応の考察
原因:タービンの使用だけでなく、5倍速増速コントラを使用しても気腫は起こる可能性がある。水を出すときにエアがでており、霧状に水が出ている場合はエアの圧が高いと考えられているので注意が必要。CR充填でも起こりうる。付着歯肉が無くなったときには起こりやすいのではないか。
気腫が起こった場合の対応:腫脹が表面に出ていなくても深部(縦隔)まで進展している可能性がある。基準は概ね顎下部が腫れているかどうかである程度判断。
「大丈夫と思いますが、念のため大学病院に行って検査をしておきませんか」ということで誠意をみせた方が患者さんとのトラブルが避けられることが多いのではないかという意見があった。
抗血栓薬服用薬剤患者への対応について
現在「科学的根拠に基づく抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン」2015年改訂版に従って抜歯を行うことが好ましい。
- ワルファリン内服患者の抜歯に関しては原則休薬せずに抜歯をする。但し、PT-INR>0以上の場合にはかかりつけ医に連絡して、ワルファリンの3日前からの休薬、もしくはPT-INR値を3.0未満になるように依頼する。
- ワルファリン以外の抗凝固薬は内服6時間以降に行うことが勧められる。
- APTTが60秒以上になると抜歯後出血が多くなると言われている。
- 高齢者と腎機能障害のある患者さんは要注意。
その他、薬剤関連顎骨壊死について
ポジションペーパー2016では「医科と歯科の相互理解と緊密な連携」、「徹底した感染巣の除去と感染予防」が強調されている。
日本口腔外科学会では骨吸収抑制薬を休薬して抜歯した場合と休薬せずに抜歯をした場合に、顎骨壊死のリスクは変わらない可能性があるという認識になってきている。
抜歯において医科への対診がなければ、ポジションペーパー2016で強調されている「医科と歯科の相互理解と緊密な連携」が蔑ろにされる可能性が危惧されるため、今後の対応について十分な検討が必要である。
我々が治療する時に、いくら注意を払っていても思いもよらぬ出来事が起こって、患者さんが不安に感じることがあります。このように治療中起こる可能性のある出来事について、原因と対応を協議して、合併症を最小限にしなければならないのです。
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