前回までの二回で局所麻酔の効果と全身の影響について記しました。
二回をまとめると、麻酔の液は数分で全身を巡って麻酔液のアドレナリンの影響で心臓がバクバクします。
血圧はそう変わらないものの、脈拍は3分から5分で血中濃度がピークになるようです。
このアドレナリンの影響は健康な人よりも心疾患の方のほうが心臓に影響します。この麻酔の影響はカートリッジ2本で時速4.8kmの速度での歩行、2階までの昇降、ラジオ体操等の運動した時の心臓の負荷と比べてだいぶ少ないということですので、日常的にこれくらいの運動をしている方であればカートリッジ2本は問題ないということですね。
心疾患の患者さんの治療のときに麻酔をどのように工夫すれば良いでしょうか。
以前は薄めればよいといわれましたが、麻酔液を薄めると止血効果や麻酔効果はどうなるでしょうか??
今回はここらへんについて記します。
1972年にScottらが、最小限の血圧上昇とする、血中濃度の上昇を遅らせる、局所麻酔薬の効果を延長させるエピネフリンの希釈倍数は20万分の一であると報告して以来、キシロカインカートリッジを20万倍となるように薄めて使用することが薦められていました。
1975年に船越らは全身麻酔での口腔粘膜の出血量を麻酔液の希釈倍数によって比較したところ、3万倍エピネフリン添加で著しく減少し、30万倍エピネフリン添加では止血効果がないという結果でした。
また、1989年に氷室らは20万分の1エピネフリン添加2%キシロカインと8万分の1エピネフリン添加2%キシロカインを比較して、前者が鎮痛持続時間は52.0±13.0分、後者が103.4±18.5分であったと報告してます。
局所麻酔の工夫
中野らはエピネフリンの少量事前投与(6.25μg)がその3分後の投与時の(50μg)エピネフリンの血漿濃度の上昇を有意に抑制できるとし、大貫らは8万分の1アドレナリン添加2%リドカインの前投与法は本投与から5分前に前投与を行うのが最も効果的であるとしており、安全に治療をする効果的な工夫です。
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