「顎下リンパ節の腫脹の原因といえば」という時のいろんな原因疾患の中にEBウィルス感染の伝染性単核球症という疾患があります。しかし、口腔外科施設14年仕事をしていましたが、この疾患について詳しく勉強することはあまりありませんでした。
今回はこのEBウィルス感染症を経験しましたので、御報告いたします。
患者さんは20代女性。口腔・咽頭部の疼痛と、顎下部の腫瘤を主訴に当院を受診されました。
口腔内には多発性の疱疹性口内炎と、扁桃腺の腫脹・白苔を認め、両側顎下リンパ節の腫脹を認めました。これは顎下腺が腫れて硬くなってもおかしくないような感じでもありました。(痛すぎて触りにくかったのではっきりしないということですが)聞けば3・4日前に38度以上の高熱があったそうです。
高熱が先行して顎下腺が腫れれば、以前報告した顎下腺のおたふくかぜが考えられますが、高熱が先行して多発性の口内炎が出現すればヘルペス性歯肉口内炎ということが最も考えられます。口内炎があれば、リンパ節が腫れてくるので、これは説明できますが、扁桃炎は説明できません。しかし、ウィルス感染は間違いないと思いましたので、内科で血液検査をしてもらってくださいと言って抗ウィルス薬を処方しました。
その後10日後ぐらいに患者さんが来院したときに、EBウィルスが陽性だったという報告を受けたのです。
EBウィルスはヒトヘルペスウイルス(HHV:human herpes virus)の中のウィルスの一つで、HHV-4と表現されます。青年期における初感染では、発熱、咽頭痛、頚部リンパ節腫脹が3大主徴といわれています。全身倦怠感を伴う39 ~ 40℃台の発熱、口蓋扁桃の発赤腫脹(ときに膿付着あり)・咽頭痛、頚部(後頸部)を主体とする全身リンパ節腫脹が1 ~ 2 週間ほど持続し、症状もかなり強いのです。
今回の患者さんにおいては発熱があって、顎下リンパ節が腫脹していて、扁桃炎があったので、これだけでもEBウィルスを疑う所見だったのかもしれません。私の中ではリンパ節の腫脹といえばEBウィルスの感染もあるというぐらいの知識でしたので、今回は鑑別診断には挙がりませんでした。しかも、多発性の疱疹性口内炎ということで、ヘルペス性歯肉口内炎という臨床診断でだったのです。まぁ広義のヘルペスウィルス感染疾患ですけどね。ということで、一つ患者さんの病気から学んで次のときに役立つことと思います。
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