先日の口腔外科学会では抗菌薬の話を聞いてきました。その中で、感染性心内膜炎予防についての話もありました。
今年の3月に感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017 年改訂版)が発表され、ネットで検索できます。そういえばちゃんと読んでないな~と思いながら聞いてましたが、今回の改訂で前回のガイドラインになかったことは、う蝕と歯周病について詳しく図解されており、咀嚼時やブラッシングの時でも菌が血管内に入って、心臓にたどりつくと解説してあることが1点です。血管内は酸素分圧が高いため、偏性嫌気性菌の生存に不利なので、歯周病菌はAggregatibacter actinomycetemcomitans 等の限られた菌種に関する報告が存在するだけであると書いてあり、なるほど~と思いました。
今回の改定でみられた我々の診療に大きくかかわるポイントが一つあります。
歯科処置前の抗菌薬の標準的予防投与法の注釈の欄に「なんらかの理由でアモキシシリン 2 g から減量する場合は,初回投与 5~6 時間後にアモキシシリン 500 mg の追加投与を考慮する」と記載されてあります。
我々の日常診療において、心臓外科手術前に術前チェックをしに来るようになりました。グラグラの歯がある場合に早く抜歯してしまいたい時があります。心臓の病気の患者さんに何度も来院させるのは気の毒なので、早く済ませてあげたいのです。基本的には抜歯の1時間前に内服させるということだったので、どうしても日にちを改めなければならなかったのです(予約の患者さんがいるので、どうしても1時間後に抜歯ができるかどうかわからないからです)。
新しいガイドラインにのっとれば、抜歯の時にちょっとアモキシシリンの血中濃度が少なくても、後で500mgを追加投与すれば菌の増殖を抑えることができるということなので、術前投与して1時間も待たなくても、後で500㎎を追加投与すると大丈夫という解釈もできると思います。
感染性心内膜炎は重篤ですが、非常にまれな疾患で、症例数の多い論文はすくないそうなので、エビデンスとしてはほんとは強くないそうです。
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