痛くなく治療することの重要性

歯科治療中に患者さんが体調が悪くなることがあります。

我々はいつ、どのような時に、患者さんの体調が悪くなるのかを知っていなければ対策はできません。

そこで、以下のような報告がありましたので、御報告いたします。

2011年の日本歯科医師会雑誌に平成17年から平成20年の4年間の歯科治療時の偶発症に関するアンケートの結果をまとめてます。

4年間の偶発症発生総数は251例で20歳代が最も多く,ついで30歳代,50歳代で多い傾向にあった。60歳以上は69人で全体の27.5%を占めていたとのことで、高齢者だけを注意するのではなく、既往歴のない若年者に対しても十分に注意する必要があるのです。

偶発症の起こるタイミングはいつでしょうか?

歯科治療に関連しておこる偶発症は局所麻酔施行時,特に局所麻酔施行直後が最も多く、歯科治療中が次に多いのです。

偶発症発生時の歯科治療内容

局所麻酔に関連した偶発症が多い可能性がある。治療は抜歯を行う時が多いですね。

どんな偶発症が起こっているのでしょうか?

局所麻酔に関連した偶発症が多い可能性がある。治療は抜歯を行う時が多い。偶発症は神経原性ショックが最も多く、過換気症候群が次に多い。これらは不安・恐怖心等精神的ストレスや痛みが原因で起こっているのです。

 

下顎埋伏智歯抜歯のときにいつ血圧や心拍が変化するかということです。初診時から処置して退室するまでの血圧や心拍を調べた論文を示します。

荻野ら 1992年

目的:下顎埋伏智歯抜歯時における循環動態変化を検討

対象:循環器疾患を有しない240名の歯科患者

方法:1/8万エピネフリン含有2%リドカイン(平均4.5ml)を使用して治療を行い、血圧、心拍数、RPP(rate pressure product)を測定した。測定は初診日の診察終了時、抜歯当日は入室後、伝達麻酔時、浸潤麻酔時、執刀時、抜歯終了時、退室時に行った。

結果

1.抜歯当日の入室時の収縮期血圧、心拍数は初診時に比べて高い値を示した。

2.収縮期血圧、拡張期血圧ともに入室時に比べて局所麻酔直後に低下して、その後は安定した。

3.心拍数は入室時に比べて局所麻酔後執刀時まで増加したが、抜歯終了と同時に低下した。

心拍数の上昇は血漿中のエピネフリン濃度上昇によると思われるが、局所麻酔薬による影響(外因性エピネフリン)であるのか、それとも恐怖心やストレスによる影響(内因性エピネフリン)であるのかは明らかにはならなかった。しかし、最も偶発症が起こりやすい時間に脈伯が上昇していることがわかった。

私の上司から習ったのは、痛くなく治療すればトラブルはすくないのだ!、ということで患者さんの体調が悪くならないようになるべく痛くないように治療するよう心がけてます。

循環器疾患患者は血圧・脈拍の変化が病態の悪化につながるため、できるだけ血圧・脈拍が変化しないように工夫して歯科治療を行わなければならないと思いますE,H,I)。

エピネフリンは特に循環系への作用が強い物質で、副腎髄質ホルモンとして体内で産生されます。体のなかでできるエピネフリンは、疼痛や不安、恐怖によって血中濃度が増加します。循環器疾患患者に対してこの体の中から出るエピネフリンを増やさないように痛まないように治療することのの重要性や不安や恐怖を取り除く鎮静の必要性が以前より報告されています。エピネフリンが循環系への作用が強いため、循環器患者への投与を避けるべきであるという意見もありますが、近年は少量のエピネフリンをつかってでも痛くないように治療することが重要と考えられています。

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