心疾患や脳卒中の経験がある患者さんに歯科治療という負荷をかけた場合に、心疾患や脳卒中が再発する可能性があるのかって事は歯科治療をする立場としてはとても興味深いことだと思います。
おもしろい論文がありました。
心疾患や脳卒中の経験がある患者で、侵襲的歯科治療後に心疾患が再発したら、どの時期に二回目の発作が多いか?ってことを調べた論文です。
歯科治療をしてるときに発作が起こりやすいんでしょうか?次の日?一週間後?
論文は
Minassian c. et.al : Invasive dental treatment and risk for vascular events: a self-controlled case series. Ann Intern Med. 2010 Oct 19;153(8):499-506
虚血性脳卒中または心筋梗塞で入院していた20歳以上の患者2万369人中1回以上侵襲的な歯科治療を受けていた患者1152人について調べた論文です。ここで言う侵襲的歯科治療とは抜歯や歯周治療です。
この論文では、血管イベント(心筋梗塞や脳梗塞等)の発生率は、歯科治療から4週間は有意に高かった、治療後1〜4週に血管イベントが起こった患者は40例で、年齢調整した罹患率は1.50%(95%信頼区間1.09-2.06)となった、5〜8週に血管イベントが起こった患者は1.11(0.77-1.61)で、この期間以降のリスク上昇は有意ではなくなり、罹患率は徐々に低下して6カ月以内に元のレベルに戻ったということでした。
この論文では最初の血管イベント後どれだけ時間を経て侵襲的歯科治療をしたのかは関係ありません。血管イベント後のどの時期においても侵襲的歯科治療後に2次血管イベントが起こった人だけで統計を取ったら、歯科治療後4週までがが起こりやすく、その後は安定するということでした。これは歯科治療が二次血管イベントと関連があることを示唆するという結論でした。
つまり、診察している時だけでなく、歯科治療一ヶ月後までは歯科治療の影響で発作がおこるかもよ~ってことでしょうね。
というわけで、この次は「血管イベント後にいつ歯科治療をおこなったら、最も二回目の血管イベントが起こりやすいか?」ってことについての論文を紹介します。
最新記事 by やましろ歯科口腔外科 院長 山城 (全て見る)
- Pell及びGregoryの分類 - 2023年7月8日
- 抜歯後の痛み - 2023年6月13日
- 完全に埋まっている親知らずにどれだけ歯石がついているのか? - 2023年5月20日
- 親知らずが起こす問題点 - 2023年4月30日
- プラークの付着率 - 2023年3月9日