親知らずが起こす問題点

抜歯が難しそうにみえる親知しらずにう蝕や歯周病がないと判断したときに、歯科医師は「まだ抜かなくていいでしょう」と患者さんに話すことが多いと思います。しかし、う蝕や歯周病にならないように対策を講じなければ、抜歯を先送りにするだけになると思います。今まで、抜歯は若い時の方が簡単でトラブルが少ないと話をしていた私からすれば、抜歯を難しい時に先送りしてトラブルを増やすことはよくないんじゃないかとおもうところです。

そこで、今回より、親知らずを保存しておいた時の問題点と、トラブルがどれくらい起こっているのか(頻度)、問題なく様子をみることができている親知らずがどれくらい残っているのかを調べたので、ご報告いたします。

2021年7月に一度に紹介患者の親知らず937症例を除く1410症例側についてブログで報告した内容ですが、今回、下顎智歯抜歯の紹介患者1481症例を除いた2497症例について検討しました。

抜歯せずに残っている親知らずのなかで、4.5%に隣接する7にう蝕が確認、6.9%に親知らず自体にう蝕が確認(C4を除く)、1.3%に歯冠がなくなるほどのう蝕がみられた。また、21.7%に骨吸収がみられ、29.1%にう蝕か歯周病がみられました。

年代別にみていくと、20代前半にはう蝕や歯周病がみられる症例は少ないですが、40歳を超えると30~40%に何かしら問題がみられました。

 

高齢になってくると抜歯して残ってくる歯自体が少ないので、以下に、親知らずがない部位も含めた数を分母とし、つまり、親知らずが両方ない患者と親知らずがある患者の数×2を分母とした機能して使える親知らずの割合を出してみました。そうすると、大体10%前後で、それ以外の90%前後は役に立たない親知らずだということですね。

さらに、残っている親知らずの割合が20代で70~80%で、60歳を超えると約80%は先天欠損か抜歯で親知らずがないことがわかりました。埋まっている親知らずをふくめて、問題なく経過している親知らずは60歳以上で14.5%、役に立っている親知らずが9.3%ということがわかりました。

60歳まで親知らずを残して問題にならなかったのが14.5%ということですが、もし、親知らずを抜かなくてもいいと患者さんに説明するのであれば、この14.5%に入るような指導や管理ができないとダメだと私は思っています。50歳ぐらいで「っぱり抜歯しましょう」となって、抜歯で困らないようにしたいといつも思っています。

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福岡で親知らずの抜歯、ドライマウス、睡眠時無呼吸症候群、口腔がん健診のことならやましろ歯科口腔外科へ。 日本口腔外科学会認定専門医が治療します。

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