親知らずの雑学

親知らずの雑学

親知らずは大臼歯の中で、前から3番目の歯のことを言います。

日本での親知らずの意味ですが, 親知らずの萌出時期である20歳時期には親が我が子の第3大臼歯の萌出に興味がなく、親が知らないうちにはえてくるという意味のようです。

昔からある言葉ですが、もともとは親知らずが生えてくるころには親はなくなっているからそのように命名されたとの意見もあるようです。

欧米では賢い歯(wise toothあるいはwisdom tooth)とされ、日本でも知恵歯や智歯(ちし)とも呼ばれています。これは一人前の人間として分別ができる年頃に生えてくる歯という意味のようです。

「新訂大言海」には、江戸徳川3代将軍家光の時代の「親知らず」俳諧作者のための作法書「毛吹草」の中に、「姥桜生ゆる若葉や親不知」という俳句が用例として記載されているそうです。これが「親知らず」という言葉が記されている書物のなかで最も古いようです。俳句にこの言葉が使われているということは、この時代にはもうすでに「親知らず」という言葉が庶民で使用されていたと考えられます。

文献によると、大昔の親知らずの話が分かっているようです。約6000万年前の穿下類という原始的なサルであった時、歯は全部で36本でした。約100~200万年前の猿人(アウストラロピテクス)になると, 全歯数は32本に減少して、3本の大臼歯のうち、第3大臼歯がもっとも大きく、機能的であったと言われています。

約80万年前の原人 (ホモ・エレクタス,原始的人類)は,自然の火を使って食物を焼きはじめました。この時から,人類の第3大臼歯の退化傾向が始まったといわれ,まず第3大臼歯は第2大臼歯よりも大きさが小さくなってきました。 約10万年前に登場した新人 (ホモ・サピエンス,クロマニヨン人)になると,約3万年前から第3大臼歯の欠如(消失)が始まりました。

約1万年前に,狩猟や漁猟に代わって,栽培(稲作農耕)による食糧の生産がはじまり,食物の質の変化を生じました。 これに伴って,歯数の異常として現われる第3大臼歯の先天性欠如が始まったそうです。

鈴木の報告によれば,親知らずが歯茎からちゃんとはえている人の割合は,縄文時代に81.0%,古墳時代に62.7%,鎌倉時代に42.9%,現代は36.0%と徐々に減少しているそうです。A)

また、山田は,第3大臼歯の欠如率(親知らずがない人の割合)について,縄文時 代人は上顎6%・下顎5%,弥生時代人は各々24%・ 19%,弥生時代~江戸時代は各々20-31%・19-35 %,明治時代~現代は各々19-41%・13-26%と報告しております。B)

全体的な内容は

中原泉:ヒトの歯は退化しているか?第三大臼歯に関する疑問?. 歯学84(2)163-169, 1996.から引用

A)鈴木尚:日本人の骨、岩波書店114-115. 1963

B)山田博之:日本人の智歯の欠如率、人類学雑誌515-516. 1993

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