カタル性口内炎

今回から口内炎のお話をしたいと思います。

口内炎は口腔粘膜に限局した炎症が起こった状態を指します。「口腔粘膜に限局した」とは、口腔粘膜だけで、その下の筋層や骨に炎症が及ぶものは除かれるということでしょう。

その口内炎の分類として

カタル性口内炎

水泡性口内炎

びらん性口内炎

アフタ性口内炎

潰瘍性口内炎

壊疽性口内炎

に分けてある分類が、割と細かい分類だと思います。この中のカタル性口内炎はあまり使わない言葉で、特に、詳しく書いてある書物がありません。今回はこのカタル性口内炎について記したいと思います。

「カタル性口内炎は細菌感染や放射線、その他物理・化学的刺激で惹起される炎症で、粘膜の破壊を認めない疼痛、発赤、水腫、唾液の分泌亢進がみられる粘膜炎を指す。」とされています。ちょっとわかりにくいですね。このカタルということばについて詳しくみていきたいと思います。

炎症のなかで、血管から血清成分とほぼ同じ成分が滲出している状態を漿液性炎といいます。このなかで、粘膜組織などの疎性結合組織内に滲出液が貯貯留した状態を炎症性浮腫、粘膜固有層の炎症性浮腫に伴って滲出液が粘膜表面に進出してくる漿液性カタル、皮膚や粘膜に限局性に滲出液が貯留して水泡を形成するといいます。消化管や鼻腔粘膜等の粘膜表層に組織の損傷を伴わない漿液性炎症が起きた場合、それと同時に粘液の分泌が亢進し、粘膜上皮の剥離が起きた状態をカタル性炎と呼ばれ、鼻粘膜から鼻汁が分泌される状態などがこれにあたります。ですので、口腔内のカタルといえば、炎症が起こって、粘液や浸出液が漏れ出ている状態のことを言うはずですが、口内炎のどんな状態がカタルなのかまったく想像できませんよね。

いつからカタル性口内炎という言葉を使っているのでしょうか??

1939年に高山先生「カントローウヰツツ氏は口内炎を単純性口内炎(上皮の損傷を伴なはぬ炎症)潰瘍性口内炎(上皮の損傷を伴なふ炎症)とせり」と記しており、これが私が探した文献の一番古い口内炎の分類でした。

とても簡単な分類ですね。上皮の損傷があるかないかだけで分類しています。それから、いつからか、この単純性口内炎とカタル性口内炎を同義として載るようになり、ほとんどの古い教科書で、単純性口内炎(カタル性口内炎)と書いてあるのです。

ということは、カタル性口内炎とは、上皮の損傷のない(びらんや潰瘍になってない)口内炎で、カタルの状態になっているであろうと予想される口内炎と理解されているのでしょう。

これはやけどして受診されたかんじゃさんですが、潰瘍にもなっていない赤くはれた口内炎ですが、これが私が持つ写真の中でカタル性口内炎としてぴったりの口内炎だと思います。これが、粘液や浸出液が漏れ出ているかどうかはわかりませんが、カタルに近いということでカタル性口内炎とつけてあるんだと思います。

今回はカタル性口内炎についてお話をしましたが、今後再発性アフタの話とビタミン、たばことの関係などの話をしていきたいと思います。

この話は昨年11月に出版した「常在菌との共存を考慮した口腔粘膜疾患の診断・治療・管理」という本の中に載っております。口腔粘膜疾患の本にあまり載ってないカンジダが関連する潰瘍や小児の口腔カンジダ症など力を入れて書いています。もしよろしければご覧ください。

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