ステージ別の下顎智歯の位置

前回は下顎智歯発生のお話をしました。。下顎智歯の位置や方向を理解するためには、下顎智歯の発生の段階で、どの位置に歯胚があるかを考えると理解しやすいと思います。今回はどの年代といいますか、どのステージで、下顎智歯がどの位置にあるのかを見ていきたいと思います。

最初の症例は10歳前後の症例で、歯冠の石灰化が始まる頃です。歯冠が形成される頃の歯胚は下顎枝の中にあり、丁度咬合平面の高さにあります。下顎枝は歯列弓の外側に広がっているので、下顎枝内の歯胚は歯列弓の延長上にはありません。歯列弓の延長線上の外側の下顎枝内にあるのです。

 

13歳ぐらいになると、第二大臼歯が出てくるころではないかと思いますが、このころには下顎智歯の歯冠がある程度完成してきています。やっぱり、下顎智歯歯胚は下顎枝の中にありますが、このころに第二大臼歯と下顎智歯の高さが逆転してきます。つまり、それまで、下顎智歯のほうが高い位置にあったのに、第二大臼歯のほうが高い位置に代わるのです。今から下顎智歯が形成され、歯列弓上に並ぼうとしています。下顎枝内にある智歯は歯列弓の外側にあるのですが、これが歯列弓に並ぶためには咬合面を内上方に向けて移動するのです。ですので、歯冠を形成した下顎智歯は内上方に咬合面を向けているのです。

15歳ぐらにになると第二大臼歯の歯根が萌出して歯根が完成しています(正確な萌出時期は別の資料をご覧ください。)下顎智歯はこのころには歯根が全く形成してない状態の下顎智歯もあれば、歯根がある程度でき上っている下顎智歯もあり、バラエティーに富んでいます。しかし、このころの下顎智歯も多くが下顎枝内にあるようにみえます。しかし、下顎骨体に出てきている症例もそこそこあって、そのあたりのデータをそのうち提示したいと思います。その後、下顎智歯は歯根を形成して萌出します。萌出は歯列弓の延長線上で、第二大臼歯遠心面と下顎智歯近心面が接触するように萌出すると正常萌出となります。

下顎智歯はさまざまな理由で萌出異常をおこし、様々な位置、方向の埋伏智歯となります。

下顎智歯の歯胚が発生する時には下顎枝の中に発生することがわかったと思います。下顎枝は下顎体から外側に広がっています。つまり、歯列弓の延長線上に下顎枝があるわけではなく、歯列弓の外側に下顎枝があるんですね。歯胚は歯列弓の延長線上にあるわけではなく、歯列弓の外側の下顎枝で発生します。この下顎智歯が歯列弓に並ぶためには内側に向かって萌出する必要があります。だから、10代の歯根形成前、歯根形成途中の下顎智歯は歯列弓の外側にあり、内側向きでやや上方に咬合面を向けていることが多いです。この下顎智歯の位置を理解しなければ、抜歯する時に間違った部分に切開を加え、適切でない骨削合をしてしまいます。

 

前回下顎智歯の位置や方向を考えるときに発生が重要であるといいましたが。この発生の時期に形成されるある構造物が大きなヒントになるのです。そのヒントは次回お話ししたいと思います。次回もよろしくお願いいたします。

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